以下、当日の発表について報告させて頂きます。
【特別講演会】
「地域連携の基本 〜医師との連携技術〜」
長谷川尚哉先生
大磯治療院 院長
社会医療法人三思会 とうめい厚木クリニック統合医療療法科 鍼灸マッサージ師
日本東洋医学系物理療法学会 理事
神奈川衛生学園 非常勤講師
病鍼連携連絡協議会 世話人代表
長谷川先生は母校での講師に従事するかたわらでご開業されて以来、医師との連携に取り組まれて来られました。これまで100名以上、鍼灸不適応疾患など精査の必要性のある患者様を適切な医療機関に受診を勧めてこられたそうです。詳細な所見のもと診療情報提供書を渡し紹介してきた結果、7割以上の医師から診療報告書を頂けるなど、医師の方々からの信頼を得られてきたそうです。その結果、医師から患者様をご紹介頂けるようになり、立地的にはさほど利便性の高くない地ながら広告費をかけずご紹介のみで院を多忙に運営されています。
「鍼灸マッサージ師は主に「未病治」の領域を実費治療でカバーすれば、疾患の早期発見早期治療にもつながり、健康寿命も伸ばし、国民医療費を下げることができる。問診や施術に長い時間が取れる我々だからこそ、早期発見が必要な疾患の疑いのある方を早めにスクリーニングし、医療機関に送ることもできる。そしてそれは、国家資格である鍼灸マッサージ師がより活躍できる場である。」というのが、長谷川先生の持論のひとつだと思います。
生涯のなかで癌に罹患する事が多く、特に高齢者においては発症率が高くなること、また、横行するリラクゼーション業界を利用される方々のなかでも、隠れた重大疾患を抱えた方が少なからずいる、このことを考え、わたしたち鍼灸マッサージ師が適切に患者様と向き合えば、患者様や医師からより信頼され、わたしたちも繁栄するという事を熱く語られました。他にも書ききれないほど、あっという間の1時間半の豊富で濃密な内容でした。
【OB・OG活動事例報告】
「勤務鍼灸師から理療科教員へ」
西村みゆき先生
(東京都立文京盲学校 勤務)
西村先生は現在、東京都立文京盲学校に勤務されています。先生が鍼灸マッサージの道を志してから、そこに至るまでの経緯をお話し頂きました。
高校卒業後に親族の経営する接骨院に就職して以来、この仕事に興味を持ち、やがて鍼灸専門学校、つづいてマッサージの専門学校、母校教員養成課程、母校専攻科、そして母校大学院と、つねに働きながら勉強を続けられてきたことは非常に素晴らしいことだと思いました。
現在は、文京盲学校内で主幹教諭という役職におられます。(校長−副校長−主幹教諭−主任教諭−教諭) 役職上、授業や担任業務よりも主幹としての業務に追われる毎日とのことですが、最近はミャンマーの盲学校への支援など活動の幅を広げられています。
他にも、盲学校の現状や、専攻生時代からの研究、盲学校教員に必要な指導力についての思いなどを語られていました。
「要介護高齢者の脊椎圧迫骨折後の疼痛に対する訪問鍼灸治療の症例報告」
矢野健太郎
(日本レメディー 勤務)
矢野の勤務先の訪問看護・リハビリ部門や、近隣のケアマネジャーの方々から脊椎圧迫後の痛みに悩む患者様をご紹介されることが数例重なってきたことから、外出困難な状態の高齢者で圧迫骨折後の慢性疼痛に悩む方々に対する鍼灸治療の可能性や限界について考えてみました。
整形外科等への通院が困難で、また通院やデイサービス等での処方やリハビリが奏功しない症例が少なからず存在していること、骨折や関節疾患をきっかけに要介護状態に陥るのは脳血管障害についで多い事などを紹介しました。
そして、経過良好であった例、また、結果として不適応であった例を挙げ、その適応などを考察してみました。
「整形外科における鍼灸師の役割」
樋口尚生先生
(都立大整形外科クリニック 勤務)
樋口先生は母校修了後より現在のスポーツ整形外科クリニックに勤務されています。その中での活動や、院外でのフィールド活動などについてお話し頂きました。
現クリニックへは、ペインクリニック外来開設に伴い鍼灸も取り入れるとのことで就職したものの、ペインの医師が退職、一旦は道が閉ざされたかという状況のなかでも地道に頑張っておられます。
理学療法士や柔道整復師など医療系の資格者の一年目は、医師の診療を補助する医療クラークの業務を続けられる中で、問診から画像所見のオーダー、診察の記録等、医師の右腕となる貴重な経験をされています。
院内の勉強会では、鍼灸についての学術的、臨床的な啓蒙もされているようです。また、院内外でも、自身の選手経験も活かし、東大野球部などのサポートをされています。
特別講演の長谷川先生の内容にも通じることもあり、懇親会でも長谷川先生と話されていたことが印象的でした。この会が、また新たな展開につながればと思いました。
そして総会の後、毎々のように懇親会でも多くの方がそのまま参加され、特別講演の長谷川先生も御参席頂き、皆様大いに盛り上がるなかであっという間にお開きの時間となりました。
(文責:事務局 矢野健太郎)